ひどい頭痛がすれば、「ひょっとして?」と慎重になる。だが、「軽いから大丈夫」と考えて良いものだろうか。

43歳のMさん。ある朝、いきなり、後ろ頭が痛くなった。が、市販の鎮痛剤をのんで、仕事に出かけたと言う。でも、3日経っても、頭痛が続く。

頭痛は軽いが、突然起きたというのは本当らしい。「髭を剃っていた時だった」と、記憶は生々しい。となると、ヤバイ。すぐに、頭のMRI(磁気共鳴画像)の検査をする。と、軽いくも膜下出血が疑われ、MRA(磁気共鳴血管画像)では、5㍉くらいの大きさはある破裂脳動脈瘤が見付かったではないか。

くも膜下出血の80%程度は、バットで殴られたみたいなどと表現される激烈な頭痛で始まるとされる。意識がなくなったり、嘔吐したりもする。だが、出血の程度が軽い人では、頭痛の程度も軽く、歩いて受診する。だから、患者さんも医者も、そんなコワイ病気の頭痛だとは思っていないことが多い。ある報告では、歩いて受診する頭痛患者でくも膜下出血が見逃される割合が高く、27%で初診時の診断が難しかったという。

大事なのは、頭痛の程度ではなく起き方だ。痛みはすぐにピークに達する。だから、Mさんのように、頭痛が始まった時に何をしていたか記憶していることが多いのである。また、頭痛は軽いので、時間がたってから受診することがある。となると、くも膜下に出た血液は髄液で薄められ、精密検査をしても出血が見付からないことがある。発症から4日以上経つと誤診されやすくなるという報告もあるのだ。

頭痛の程度は軽くても、いきなりピークに達し、何をしていた時か記憶しているような頭痛は、くも膜下出血を疑って早く受診を。でないと、医者の寿命はますます短くなる。おー、コワ。

(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック、脳神経外科医・石黒修三:3/13北國新聞掲載)