今年の夏は、バカ暑い。体が不調になると、まずは「熱中症ではないか?」と考えるひとは多いだろう。が、実は、別の困った病気が原因だったりする。
76歳のKさん。朝方、びっしょり寝汗をかいていた。トイレに行こうとしたが、いつもと違う。立とうとするが、ふらついて転びそうになる。熱中症によるめまいかと思い、水分を十分に摂って経過をみていた。が、昼になっても状態は変わらない。どうも、左の足に力が入らないように感じるという。
と、話を聞いただけで、ワッシーの頭には、「脳梗塞」という病名が浮かんでくる。よく診ると、Kさんの左の手足には、足だけではなく手や腕にもごく軽い運動麻痺がみられるではないか。頭のMRI(磁気共鳴画像)の検査では、右側の大脳深部に脳梗塞が見付かった。
夏には、熱中症だけではなく、同じく脱水が原因で、脳梗塞も起こりやすいのである。脱水で血液がドロドロになり、流れが悪くなった血管が詰まる。水分の補給をしない睡眠中に発汗などで脱水が進むので、脳梗塞は朝に発症しやすいのだ。
Kさんがそうであるように、脳梗塞と熱中症の症状は似ていて間違いやすい。めまいやふらつきがそのひとつだ。うまく立てない、ふらついて歩けないという。が、片麻痺といって、体の片側に力が入らないのであれば脳梗塞の危険性が高い。また、呂律が回らないなどの言語障害、視野が欠けたりものが二重に見えたりする視覚障害などがあれば脳梗塞が疑わしい。
ま、熱中症であれ脳梗塞であれ、疑わしければ救急車を呼んだほうがよい。だが、大騒ぎしたくなければ、水分摂取だ。脱水気味と思ったら、寝る少し前にコップ一杯の水を。おっと。どうせ飲みなら、水よりビールをというのは危険ですぞ。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック、脳神経外科医・石黒修三:7/3北國新聞掲載)