男が一目ぼれする「水も滴るいい女」とは、肌や髪に潤いがあって脱水とは無縁な女性のことか。この狂ったような暑い夏には、絶滅危惧種かも。

さて、こちらは、スポーツ美人のA子さん。「センセ。ビールを飲むと熱中症や脳梗塞になるって、それホント?」と、いまにもワッシーの胸ぐらを掴みそうな勢いだ。ワッシーは、前回のコラムで、「脱水にビールは危険」と書いた。が、ビール大好き人間は拡大解釈をする。

人間は、体から1%の水分が失われると、のどの渇きを感じる。暑い日の冷たいビールは、最高だ。一瞬にして、渇きは癒され、こころには幸せをもたらす。だが、それはしばらくの間だ。アルコールには利尿作用があり、アルコールの分解には水が必要になる。つまりは、こころは癒されても、体の脱水状態は、ビールを飲むほどに進んでしまうのである。

水分補給に向かないのは、コーヒーや紅茶、緑茶、番茶も同じである。カフェインの利尿作用のせいだ。摂った水分以上に、尿として体から排出されてしまえば水分の補給には適さない。「一番良いのは、ただ同然の水道水です」とは、貧乏性のワッシーの口癖なのである。どうしても色が付いていないと物足りないという人には、カフェインの含まれていない麦茶がお勧めだ。

ところで、日本人は一日にどれだけの水分を摂れば良いのだろうか?データが少ないから推定に過ぎないが、平均一日1200㍉㍑くらいのようだ。もちろん、体の大きさ、脂肪や筋肉量、活動量、環境などによって違ってくる。

そして、1200㍉㍑といえば、コップ一杯200㍉㍑として6杯だ。起床時、毎食事、食間、入浴後などと、そんなに飲めようか。水が滴らなくても健康を維持するだけで、結構にしんどい。

(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック、脳神経外科医・石黒修三:7/17北國新聞掲載)