脳神経内科では、患者さんから「認知症は大丈夫でしょうか?」「脳の萎縮はありませんか?」と不安の声をよく聞きます。認知症への関心が高まっていることを日々感じます。9月はアルツハイマー月間です。認知症にはいろいろなタイプがあります。最も患者さんが多いアルツハイマー型認知症では、診断方法として血液バイオマーカーの研究が進んでいるほか、早期治療として「レカネマブ」(アミロイドβに対する抗体治療)の登場が大きな話題になりました。

そして、アルツハイマー認知症を含む全ての認知症において、診断や治療だけでなく、認知症にならない工夫、予防もとても重要です。有名な医学誌であるランセット誌によると、認知症の発症リスクの4割は、生活習慣や環境因子、社会的つながりなど、多くの要素が影響することが示されました。その中には「孤独を避けること」や「難聴への工夫」なども含まれています。また、2024年の最終報告では「LDLコレステロール値の適正化」や「視力低下の改善」が新たな重要リスク因子に追加されました。

高齢の方には「毎日、人と話す」ことをお勧めします。会話は最も身近で効果的な脳トレです。そして、中高年の方は、症状が出る前の今こそ、血圧、血糖値、睡眠、運動の見直しに加え、LDLコレステロール値や視力のチェックを行いましょう。それが今から自分の脳を守る大切な一歩です。

(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック副院長、脳神経内科医:R7.9.25北國新聞掲載)