肩が痛くなって、腕を挙げれなくなったという50代の女性が来院されました。話を聞くと、特にきっかけなく急に肩の痛みが出て動かせなくなったとのこと。診察してみますと、自分で動かしても、他人が動かしても肩の痛みが強く、動かせない状態です。X線検査では肩関節に白いモヤモヤとした像がありました。

これは石灰いわゆるカルシウムが、肩に沈着し腱や関節に炎症を引き起こすという、「石灰沈着性腱板炎」と呼ばれる疾患です。カルシウムが、肩関節に沈着する原因ははっきりわかっていませんが、徐々に腱に沈着し、日常生活動作などを契機に炎症を引き起こすと言われています。

症状は、急な肩関節痛や運動制限で、夜間に強い痛みを伴うことがあります。40~50代女性に多く見られ、再発したり左右交互に発症するケースもあります。

診断は、X線撮影で関節内に白く写る石灰像と、特徴的な症状があれば比較的容易です。腱の損傷を伴うことや、他の疾患との鑑別のために、MRI検査や超音波検査で調べることもあります。

治療は、局所を安静にし消炎鎮痛剤や外用剤、ステロイド注射を使用します。数日~数週で軽快することが多いですが、再発傾向がある場合や、長期化することもあります。この場合は、関節洗浄、石灰除去といった手術治療が選択されることがあります。

(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック院長、整形外科医:北國新聞掲載)