女性が認知症になりやすいのは、女性の方が長寿だから、だけではない。女性ホルモンの関係もあるらしい。と聞いては、若いひとでも心配になるのだろう。
48歳のA子さん。「人の名前が出てこない。今、何をしようとしていたか分からなくなる。仕事でミスが多くなった。認知症ではないか?」と青くなっている。
だが、彼女のもの忘れは一時的なもので、進行性ではない。もの忘れのテストで、記銘力低下も見当識障害もみられない。頭のMRI(磁気共鳴画像)の検査でも、脳の萎縮や血管障害を認めない。となれば、認知症とは言えない。よく話を聞くと、もの忘れの他に、顔のほてりや疲れやすさ、不眠なども伴うという。
A子さんの症状は、「更年期のもの忘れ」ではなかろうか。女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少による一時的な認知機能の低下によるものが疑わしい。
もともと、エストロゲンは、記憶と関係が深い。エストロゲンの受容体は、記憶の取り込み口である海馬に多く見られるという。神経細胞の保護作用や脳血流の維持作用があるエストロゲンは、海馬の働きに強い影響を及ぼすのだ。
更年期には、エストロゲンは波打つように増減を繰り返しながら減少していく。その急激な減少は、一時的な機能低下としてのもの忘れを起こしやすくするのかもしれない。
また、更年期のホルモンバランスの乱れは脳の混乱をもたらし、自律神経失調、イライラや不安、憂うつ、不眠を引き起こして体調を悪化させる。これらも、記憶や集中力低下に影響して、更年期のもの忘れの原因になるという。
「なら、ホルモン補充療法が良いのでは。認知症の予防にもなりそうだし」と、A子さんは目を輝かす。が、そんなうまい話があるかどうかは、次回にでも。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック・脳神経外科・石黒修三:5/2北國新聞掲載)