更年期障害というのは、女性だけにみられるものではない。男性ホルモンであるテストステロンの低下に伴い、40から70代の男性の半数に自覚があるという統計もある。
65歳になる知人のTさん。「この頃、馬力がなくなって、疲れやすい。忘れっぽくなったせいか、仕事のミスが増えた。あっちの方もさっぱり。これは、男の更年期か?それとも、認知症の始まりか?」とぼやく。
確か数年前にも、もの忘れを気にしていた。認知症なら、もうかなり症状も進行して、話し方だけででも異常を感じさせることだろう。更年期については、採血でテストステロンの値を確かめる必要がある。が、否定はできない。疲れやすさやイライラ、集中力の低下は男の更年期症状としてよくみられるものである。最近自覚するという筋力の低下や下腹の出た体型もテストステロンの低下によるものかもしれない。
「でしょう。中でもイヤなのは、アルツハイマー病。で、テストステロン補充療法(TRT)に予防効果はないの?」とTさん。確かに、最近の研究で、テストステロンには、脳の神経細胞を保護し、アミロイドβの蓄積を抑える働きがあることが分かってきた。
加齢によるテストステロンの低下が著しい高齢の男性では、TRTによって記憶力や精神的な活力を取り戻らせ、アルツハイマー病の発症リスクを低減させる可能性はある。だが、一部の研究で、TRTによる認知症の予防効果が認められているだけで、確実な証拠には至っていない。
というわけで、Tさんの役には立てないワッシーだ。が、更年期症状や認知機能の低下も疑わしいのだから、このまま放っておいてはいけない。まずは泌尿器科を受診することだ。何?それがイヤで、ワッシーに相談したって。ウーム。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック脳神経外科・石黒修三:5/30北國新聞掲載)