ワッシーのような老人でも、たまには、しゃれたレストランでランチでも楽しみたいと思うのだ。が、どこも、いつも、女性客で満員である。
女3人寄ればなんとかというらしいが、実に騒がしい。老いも若きも、「今話さないで、いつ話すのよ」という調子である。しかも、誰しも、声が大きい。ひょっとして難聴かと思ったりするほどだ。が、そうではない。周りに合わせて、自然と皆大声になるのだろう。つい、「来るんじゃなかった」と愚痴が出る。
おっと、医者ともあろうものが、それを言っちゃあお終いか。女性は、アルツハイマー型認知症の発症率が高い。男性の2倍もあるのだ。その女性陣の、男には理解しがたい会話力こそは、ただいたずらに非難されるべきものではない。いや、逆に、推奨されるべきものなのである。
昨年、日本で、日常会話頻度と認知症の関連についての調査結果が報告された。それによると、会話頻度が「ほぼ毎日」のグループを基準にして、「週に1~4回」では1.18倍、「月に1~3回」では1.17倍、「月に1回未満」では2.06倍認知症のリスクが高く、逆に「毎日数人と」では0.88倍、「毎日多くの人と」では0.80倍と、会話の頻度の多い人ほど認知症リスクが低くなったという。
もともと、社会的接触や交流が少ないことは、認知症リスクの一つとされている。会話は、それを防ぐための簡単で有効な手段である。だから、ワッシーは、医者の立場として、女性のおしゃべり、いや、話し好きに文句をつけてはいけないのである。ただ、TPOも考えて、もう少し小声で願うだけである。だが、はた目構わず興奮して会話できるほど、その効果があるのかもしれないのだ。ここは、男の我慢のしどころであろうか。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック:脳神経外科:石黒修三:3/21北國新聞掲載)