よく、「歳のせいかふらつきやすくなった」と言う。が、なかには、コワイ病気が隠れていることもある。
88歳のT子さん。「また、転んで頭をぶつけた」と訴える。耳が遠いので、問診も診察も充分にできない。が、約1カ月前から、ふらつきやすくなったようだ。「また」というのは、1週間前にも、歩行中に転んで頭を打っているからだ。でも、頭のCT(コンピューター断層撮影)では、異常はなかったと家族が話す。
手足に麻痺はなく、目の動きも正常のようだ。目を閉じて立つとふらつくし、片足では立てない。が、左右差はなさそうである。頭の打撲は軽微だ。が、「何もしないのに、急にふらついた」と言うのが気になる。普通に歩いていて、急にバランスを失って転んだようである。なら、一過性脳虚血発作を繰り返した脳梗塞の疑いが残る。
で、頭のMRI(磁気共鳴画像)の検査をする。と、脳幹という所で平衡感覚に関係した部位に、新しくできた脳梗塞が見つかったではないか。こういう新鮮な梗塞は、CTでは検出できない。
高齢者はふらつきやすい。原因としては、加齢による平衡感覚の衰えや筋力低下によるものが多い。が、それは、いつの間にかみられるようになるもので、T子さんのように「急にふらつくようになる」というものではない。また、発作的であっても、起立性低血圧や頭位めまいなどでは、立ち上がった時や頭の位置を変えた時などの引き金があるはずだ。
そうだ。歳を取ればふらつくものと決めつけてはいけないのだ。ことに、誘因もなくいきなりふらついたり、それまでと経過が違う場合には、まずは脳神経の専門医に相談するとよい。遠慮は要らない。大概の医者には、不謹慎ながら、珍しい病気を面白がって診る習性がある。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック・脳神経外科・石黒修三:12/4北國新聞掲載)