めまいも頭痛も、よくある症状である。なかには、両方とも抱え込んでしまうという患者さんもおいでる。

23歳のF子さん。起床時からグルグル回るめまいがして、吐き気がしていた。と、今回は、めまいの他にズキンズキンとするひどい頭痛も加わった。体を動かすと、めまいも頭痛もひどくなる。さらに、光が眩しいとも訴える。

めまいは、2、3年前から時々起きていたが、耳鼻科の検査では異常はない。頭痛は、これまでもみられ、時に寝込むこともあったらしい。脳神経の症状はなく、MRI(磁気共鳴画像)でも異常はみられない。となれば、F子さんの病気は、「前庭性片頭痛(VM)」が疑わしい。めまいが主で頭痛が副のようにみえるが、実は逆だ。めまいは、片頭痛の症状の一つに過ぎないと考えたらどうだろうか。

前庭性片頭痛(VM)とは、5分から72時間のひどいめまいを過去に5回以上繰り返し、めまい発作の少なくとも50%以上に日常動作を制限するような頭痛の増強、光過敏や音過敏などを伴った片頭痛兆候があるものとされている。が、VMの診断は簡単ではない。

その理由はいくつかある。診断基準が約10年前に提案されたもので、医者の間でも、いまだ十分に周知されていないこと。患者さんも、頭痛が起きても、いつものことと思って、訴えないことがある。さらに、頭痛のない時のVMもあるから、片頭痛がめまいの主病変とは考えにくいことなどである。

VMには、片頭痛の治療が必要だ。が、めまいが片頭痛の前兆という脳幹性前兆を伴う片頭痛とか、めまいに片頭痛がただ併存しているケースもあり、それぞれ治療法が異なるから要注意だ。めまいや頭痛の中には、医者の方もめまいや頭が痛くなりそうになる病気があるのである。

いしぐろ脳神経・整形外科クリニック、脳神経外科医・石黒修三:6/19北國新聞掲載)