昔から、「人の振り見て我が振り直せ」と、よく言い聞かされたものである。だが、それが教訓なだけに、なかなかに身につかない。

少し年上の先輩に、ズバリ、「さすがに君も動きがスローになった。お腹も出てきた」などと言われた時には、心が揺れた。「なんとデリカシーのないことを」とどこかで相手を責めている。

が、さて、ワッシーとて、同じ医者。自分はどうなのであろうか?医者というのは、見方によっては無神経そのものの人種である。患者さんの、誰にも見られたくないところまでジロジロ観て、ここが悪い、そこも悪い。ここもダメになっているなどと、人の欠点を並べ立てるのが仕事だ。ものには悪いところがあれば良いところもあるはずだが、そんな道理を知らないのか。人間の体には、普通のところと悪いところしかないみたいに言う。そして、医者の指示に従わないと、その普通のところも悪くなって、ついにはどうにもならなくなるかもしれないなどと脅かすのである。

元々が、患者さんの私生活の中にまでズカズカ入り込んで、イヤなことや苦手なことばかりさせようとする。タバコがストレス解消の人に禁煙を強いる。夜の一杯の楽しみのために働いているような人にも禁酒だ。肥満が良くない。運動しろ。減塩しろ、などとうるさいことしきりである。そして、病気の経過が思わしくないと、卑怯にも、「それは歳のせいで」などと言い放ったりする。これでは、医者が患者さんから嫌われても仕方がないか。

だが、嫌われて、仕事に支障をきたしてはいけない。と、どんな医者でも、少しは患者さんに愛想も良くして、もの言いも優しくデリカシーを持って接しなければならないと思うようだ。でも、大概は三日も続けば良いほうだったりして。

(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック・脳神経外科・石黒修三:10/9北國新聞掲載)