金沢市のすこやか検診の結果によれば、65歳以上になると20%程度の人に難聴がみられるという。歳のせいと諦める人もいれば、大騒ぎする人もいる。
クリニックに通院中のK子さん(71)。ある時、耳が遠くなったのに気付いた。で、「センセ。難聴になると、認知症になりやすいと聞いた。私も、最近、忘れっぽい。認知症では?」ときたものだ。確かに、軽度の難聴と年齢相応のもの忘れはある。だが、頭のMRI(磁気共鳴画像)の検査でも異常は見つからない。また、いつもの空騒ぎか。
もっとも、難聴が認知症のリスクを高める大きな因子になることは、確からしい。2020年に、国際アルツハイマー病協会国際会議の論文がランセットという医学雑誌に報告されている。認知症の予防可能な危険因子の中で難聴がトップに挙げられ、中年期(45~65歳)の難聴を治療しなければ、高齢期に認知症になる危険性が約2倍になる可能性があるという。
聞こえないと、うまくコミュニケーションがとれない。会話が上手くできないので、消極的になる。社会的にだんだん孤立してくる。ますます脳の刺激が減り、その悪循環で認知機能の低下が進行するというわけだ。
だが、難聴と認知症の関係を強調し過ぎると、K子さんのように、難聴イコール認知症と短絡的に捉える人も出てくる。問題なのは難聴そのものではない。難聴による脳の刺激不足である。補聴器の利用に読書やSNSなど、不足分を補う方法はいくらでもありそうだ。
いや、その前にすべきことがある。耳が聞こえにくいと思ったら、まずは耳鼻科の受診だ。後日、K子さん。ニコニコ顔でやってきた。「耳鼻科で診てもらったら、耳垢が詰まっていたそうで。今は、普通に聞こえるわ」と。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック・脳神経外科・石黒修三:4/4北國新聞掲載)