いきなり激しい頭痛が起きたら、原因を徹底的に調べなければなるまい。
38歳のS子さん。10代からの頭痛持ちである。ある日、排便後にいきなり後頭部が痛くなった。いつもの頭痛と違って、雷が落ちたか、バットで殴られたかと思ったと言う。2~3時間は続いたようだ。そして、翌日にも同じことが起きた。「センセ。ひょっとして、くも膜下出血?」と青ざめている。
医者のほうも、身震いがする。突然発症して1分以内に痛みがピークに達し、5分以上続く激しい頭痛ということだから、それは「雷鳴頭痛」と呼ばれる。で、その原因となる病気で一番コワイのは、くも膜下出血である。
もっとも、頭痛が2~3時間でなくなっていることや、2回目の頭痛の方が軽いのは、くも膜下出血に典型的ではない。だが、まずは、MRI(磁気共鳴画像)の検査が必要だ。しかし、くも膜下出血はもちろん、脳出血や腫瘍も見当たらない。MRA(磁気共鳴血管画像)でも、脳動脈瘤や血管奇形、動脈解離や攣縮などの血管の異常もみられないのである。原因が特定できない雷鳴頭痛だ。となれば、S子さんの頭痛は「一次性雷鳴頭痛ということになる。
一次性雷鳴頭痛なら、鎮痛剤などの対処療法しかない。が、命に関わる病気ではない。と、ここでホッとしているわけにはいかない。超電導のMR装置でも、脳や脳血管のすべての異常が検出されるとは限らないのだ。また、可逆性脳血管攣縮症候群という病気なら、発症初期には血管攣縮を認めないという。
そうだ、ホントは、一次性雷鳴頭痛というものはないかもしれないのである。だから、医者は、どこまでも疑い深く、執拗に検査を繰り返さねばならないのだ。はい、勿論。それは、医者の性格が悪いせいではありません。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック、脳神経外科医・石黒修三:3/27北國新聞掲載)