女性で50歳前後の更年期には、それまでの頭痛がひどくなったり、頻回に起きたりすることはよくあることだ。でも、それが初めて起きた頭痛なら、軽く考えてはいけない。
51歳のF子さん。2、3年前から、2~3カ月に一度、季節の変わり目などに、両側の拍動性頭痛のため2~3日は寝込むようになった。動くと頭痛がひどくなり、嘔吐する。光や音に過敏になった。だが、これまで、生理痛は腹痛だけで頭痛はなかったという。
50歳前後で初めて起きた頭痛と聞いては、老医も身震いが止まらない。命に関わる重大な病気が原因の二次性頭痛の危険性が高いからだ。でも、脳神経に異常は見られないし、頭のMRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピューター断層撮影)でも異常は認めないのである。
ということは、F子さんの頭痛は、命に別状はない一次性頭痛ということになる。しかも、症状や経過からは、片頭痛の疑いが強い。しかも、片頭痛に奏功するトリプタン製剤で痛みは十分にコントロールされるではないか。
では、なぜF子さんに片頭痛が起きるようになったのだろうか?それは、更年期には、ホルモンバランスが乱れてエストロゲンが急激に減ることがあるからだ。と、片頭痛の原因物質であるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出されやすくなる。CGPRが増えると、脳の血管が拡がり、炎症や痛み物質が発生し片頭痛の痛みが引き起こされるのだ。
それで、F子さんのように更年期に片頭痛が初発するケースもあり得るのであろう。かといって、ワッシーは、F子さんの頭痛を、片頭痛と決めつけているわけではない。頭の片隅のどこかに、二次性頭痛の疑いも残している。頭痛を診る医者には、愚直なほどの慎重さが求められるのだ。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック・脳神経外科・石黒修三:10/3北國新聞掲載)