医学も学問のはず。なのに、そう簡単に定説が変わってもらっては困る。
長い間、お酒は百楽の長とされ、認知症との関係でも良い評価がなされていた。適量の飲酒をする人は、まったく飲まない人や多量に飲む人に比べ認知症になりにくいというのである。で、すぐに酔って顔が赤くなるというのに、頑張ってお酒を飲んだりした人もいたかも。
でも、最近は、飲酒の評価が180度逆転している。「適量の飲酒でも、認知症の予防にはならない。アルコールには毒性があり、摂取量に比例して認知症のリスクが高まる」という考え方が主流になってきたのだ。
大逆転の理由は、統計の取り方やその解釈によるものか。英国の研究グループの指摘によれば、認知症を発症した人では、診断前の数年間はアルコール摂取量が少なかったという。過去の研究では、適度の飲酒に認知症の予防効果があるように思われていた。が、実際には、早期の脳機能低下がアルコール摂取量の減少につながっていたのである。つまり、因果の逆転に陥っていた可能性があるという。
また、日本の論文でも、適量飲酒者よりも非飲酒者のほうが認知症のリスクが高いように見える理由として、非飲酒者には、うつなどの精神的疾患や心疾患になったために飲酒をやめた人が含まれていることが推測され、これらと認知症リスクとの関連を疑うものもある。
また、MRI(磁気共鳴画像)の画像を解析した研究によれば、少量の飲酒でも習慣的になると脳の萎縮が進行するという。高齢者では、少量といえどもアルコールは避けたほうが賢明だという。が、「なぁーに、飲酒にもメリットはある。そのうち、また評価の違う研究結果が出てくるかも」などとうそぶくのは、このお酒が好きな老医だけではあるまい。
(いしぐろ脳神経・整形外科クリニック・脳神経外科・石黒修三:7/25北國新聞掲載)